
伊江村 実施レポート(2023年2月18日~21日)
皆さん、沖縄県伊江島(いえじま)をご存じでしょうか?美ら海水族館からもその姿をはっきりと見ることができる、本部町から約北西にたった9キロしか離れていない離島です。独特のフォルムをしているので、見覚えのある方も多いのではないでしょうか?
伊江村は、そんな伊江島一島の全部で構成されています。人口は4,000人弱で、那覇からは名護を経由して本部町の本部港へと移動し、1日4往復のフェリーで30分乗船すると到着します。県民、県外観光客問わず日帰りで楽しむ方も多い、アクセスのしやすさが特徴の離島です。
伊江島のシンボルは、タッチューの名称で親しまれている標高172mの「城山(ぐすくやま)」で、沖縄本島からもその美しい全容が望めます。
農業や畜産業が盛んで、特産品としては伊江島産の落花生を使用したジーマミー豆腐が有名です。
伊江島では、10年ほど前から民家体験泊「民泊-ホームステイ」を盛んに受け入れており、「地元の方と交流しながら、沖縄ならではの文化や営みに触る」というユニークな体験も可能です。
今回のしまむすびワーケーションは、そんな伊江島ならではの「民泊」を取り入れた、【ふるさとじかん】を共創のテーマにしたワーケーションです。
『「ただいま」と言える新しい旅と島のSDGsについて考える3泊4日』と銘打ったこのワーケーションには、県内外各地から年齢も性別も仕事も様々な7名の方々にご参加いただきました。
多様な参加者が島の魅力に連れ、これからの伊江島を真剣に考えた今回のワーケーションについて、伊江島の特色も伝わるように存分にレポートしていきます!!
<初日:2月18日土曜日>
告知開始から2か月、いよいよ待ちわびていた伊江島のワーケーションがはじまりました。
天気も最高!!スタートは本部港のフェリー乗り場、参加者全員が時間通り集合して、無事に誰一人乗り遅れることなくフェリーに乗船しました。事前にオンラインの「タビマエプログラム」でお互いについて知っていたこともあり、すぐにみなさん打ち解けることができました。
あまりの天気の気持ちよさに、自然とみんなでフェリーの屋外デッキへ。荷物を降ろし、風を感じながら話していると、あっという間に伊江島の港が見えてきました。
船が港に入っていくと、手を振っている人たちが見えます。よくよく見ると現地コーディネイターである玉城さんとその御家族、スタッフの方がお出迎えをしてくれていました!!
島に到着するタイミングから、人の温もりを感じられる、大変心地よいスタートになりました。
港に到着すると、玉城さんはさくっとプログラム説明を終えて、早速「城山(ぐすくやま)」登山へと案内してくれました。は、早い。(笑)
先ほどまで船から眺めて見ていた風景の頂上にいきなり登ることに、面食らったメンバーもいたかと思いますが、登山時間は10分ほどで、あっさりと頂上に到着。その壮大な景色に息を飲んでいました。みんな揃って登山口前で記念撮影をして、今度は地元の公民館で入村式。
各受入民家さんとご対面し、お互い自己紹介をしていると、ゆんたく会(交流会)ということもあり、地元の有志と子供たちが、踊りとフラダンスを披露してくれました。
拍手喝采の中で、なんと玉城さんのご指名でダンス経験のある参加者が壇上に。突如、フラダンスとヒップホップダンスを地元のダンスサークルの方々とセッションすることになりました。
一応、タビマエプログラムでダンス歴を伺っていたとはいえ、突然のご指名に驚きながらも、見事にダンスを披露し会場は大盛り上がり!!サプライズプレゼントに島の子供たちも大喜びでした。
盛り上がっていると時間はあっという間に過ぎて、一旦全員での会はお開き。参加者ごとに宿泊先の各民家さん宅へと移動、初日は終わりました。民家さん宅での二次会も大変盛り上がっていたようですよ。
<2日目:2月19日日曜日>
民家での生活は規則正しく、朝8時から朝ごはん。民家さんの手作りの朝食は、おふくろの味のようでなんだか懐かしい気持ちになります。
2日目午前のプログラムは、伊江島の歴史や観光名所を自転車で巡るサイクリングガイドツアー。周囲約22キロの伊江島は意外と高低差があり、程よいエクササイズという感じで、景色の良い伊江島空港、湧出(ワジ)という湧水がでる展望台、そして米軍が使用していた今は無人の米軍飛行場などを巡りました。大の大人が滑走路を自転車で滑走するという、青春に戻ったような時間でした。
ニャティヤ洞窟でのエモーショナルな景色を堪能したら、程よくお腹も空いてきたので、ランチタイム。
2日目のランチは、エースバーガーという老舗のハンバーガーショップにて。玉城さんは子供の頃から注文し続けている沖縄名物タコライス、女性陣はエースバーガー、男性陣はエースランチをガッツリと頂きました。運動の後ということもあり、皆さん大満足のご様子でした♪
ランチ後は少し時間もあり、天気も良かったので伊江ビーチでの自由時間。
海に入りたいメンバーもいたので、2月という時期ながらも勇気を振り絞って冬の海を堪能しました。本音は少し寒かったでしょうね。(笑)
ビーチで次のプログラムの行程確認をしていたら、居合わせた方が何やら沖を指をさしています。よく聞いてみると、なんとその先にはクジラがいるとのこと!!肉眼で見えるギリギリの距離ですが、恐らくザトウクジラのホエールウォッチングをしている船も近くにあり、間違いないようです。目を凝らして眺めると、遠くで息継ぎであるブローをしている様子を見ることができました。まさにビッグサプライズ、まさか伊江島でのワーケーション中にクジラを見ることができるなんて、本当にラッキーでした!!
クジラに目を奪われながらも本来のプログラムに戻り、午後は農業体験へ。玉城さんのご友人である島らっきょう農家さんの畑に伺い、手袋と長靴を履いてみんなで島らっきょう収穫体験に挑戦しました。皆さん初めての島らっきょう収穫体験で、想像以上に全身の筋肉を使いながら、畑に植わったらっきょうを土から引き抜いていきました。
収穫した一部を食べさせていただくと、辛みだけではなくしっかりと甘味もあり、らっきょうのイメージが変わる体験に。農家さん曰く、土がとても大事だということ。自分たちで掘り起こしただけに、その味は格別だったようです。
島らっきょう農場体験の次は畜産体験です。実は伊江島では畜産業も盛んで、黒毛和牛の子牛がたくさん育てられています。その子牛のほとんどが県外の畜産業者に買われ、日本を代表する高級ブランド牛になっていく、ということを教わりました。なかなか県外では知られていない事実を知れるのも、地域と繋がるプログラムだからでしょう。現場の人の声、畜産現場のリアルを体験し、牛さんたちの大好きな干し草をいっぱい与えながら、参加者の皆さんには畜産業者の気持ちになってもらいました。今後、伊江島ブランドをどう高めていくか、どう知ってもらうのか、どのように次世代に伝えていくのか、たくさんある課題や問題点もしっかりと受け止め、事業者の立場で考えるきっかけとなりました。
夜は地元の居酒屋さんで、玉城さんご家族も交えての交流会。2日目のプログラムは盛り沢山だったので、話題が尽きることもなく、そのままの流れで2次会スナックカラオケ大会へと突入し、大いに盛り上がりました。
<3日目:2月20日月曜日>
3日目は曇りで少し肌寒いスタートとなりました。前日と同じく民家さんの優しい朝食を食べてから、今日は伊江島の漁場見学へ。
水揚げが前日だったこともあり、セリの様子は見学することができませんでしたが、加工所を見学させてもらうことができました。ここでも地域課題があり、あまり島内消費がないとのこと。近くに良い漁場があり、加工所もあるのに販売店が少ないという、厳しい現実があります。また後継者は少ないものの、なかなか外の方を受け入れるのも難しい事情があるようでした。
加工所でお話を伺っている中で、参加者の出身地での取組みや輸送方法を低コスト化する仕組みなど、参加者の皆さんから様々な意見が飛び出し、組合の方も大変驚かれていました。
漁場見学の後は、みんな大好きお酒の工場見学です。
伊江島はサトウキビの生産量も県内有数で、そんな伊江島のサトウキビを使用したラムを生産し、『サンタマリア』というブランド名で販売されています。
お洒落な瓶のラベルの裏側に記載されているのは、細かいところまで徹底した、ラムの蒸留方法で、ご案内してくださった工場の方の熱意を感じさせるものでした。地元のサトウキビを収穫後、数時間以内に原料として使用するなど、その工程へのこだわりは特筆すべきもの。大量のサトウキビから抽出できるわずかな量の原料を蒸留酒にするところから、樽の中で寝かせることで芳醇な香りを引き出す最終工程まで見学させて頂きましたが、キビ糖独特のほんのり甘い香りが工場内に充満していたため、昼間なのにお酒が欲しい気持ちいっぱいになってしまいました。
結局工場見学後のショップではみんなサンタマリアボトルをご購入。あれだけの説明と香りと樽を見させられたら買わずにはいられないですよね。(笑)
ランチは伊江港ターミナル2階のうみんちゅ食堂で、島の海鮮に舌鼓を打ちました。午前中の漁協でのお話があったため、ありがたみも感じつつ、美味しくいただきました。
ランチ後の午後は伊江村役場に移動し、SDGsゲームの体験会。
参加者の中にSDGsを広めるための活動をされる「SDGsファシリテーター」という肩書の方がいらっしゃったため、玉城さんからその方にお願いして実現したプログラムでした。
ほとんどの参加者にとって初めての伊江島滞在という中で、3日間で観光産業、農業、漁業、畜産業など多くの業種の現在や課題を感じてきましたが、まずはそれらを参考にして「伊江島の未来を考える」意見交換会を実施。その後、皆が考えた伊江島の未来をSDGsと照らし合わせながら、他者と共創する心構えをゲームで通じて体験しました。
このゲーム、大変よくできていて、ゲームで提示されるそれぞれのゴールと達成条件は、絶対に自分一人では達成できないため、他の人と交渉したり、協力したり、時には取引したりとコミュニケーションを取らないといけない仕様になっています。今回も何人かはゴールできたものの、何名かはゴールができない状況になりました。まさに伊江島だけでなく沖縄県全域に起きている現実が、SDGsゲームを通じて体感させられ、改めて地域の方々の声や自分と立場や状況が異なる方とのコミュニケーションの大切さを学びました。
様々な意見が出た中で予定された時間は終了、役場の外にでると、なんとタイミングが良いことに伊江村村長と遭遇!皆さんと伊江村役場の前で記念撮影をパシャリ!!伊江島の未来を考える議論の後に村長に出会えたことに、強く意味を感じてしまいました。
3日目の夜は最後ということもあり、玉城さんが特別に1棟貸しの宿泊施設を用意してくださり、野外でのBBQ。プログラム中に見学・体験させて頂いた農家さんたちも加わり、大交流会になりました。特に畜産業者の方が持ち寄ってくださった伊江牛のお肉が本当に美味しくて、驚きました。結論は、早くふるさと納税に出してほしいという意見で一致しました(笑)
お肉と野菜と島らっきょうと、そして沢山のお酒を囲いながら、今回のワーケーションの「ふるさと時間」をしみじみと堪能し、ここでの濃い時間を振り返っていました。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、この日も2次会は安定のスナックにてカラオケ大会!!飲んで、歌って、しまむすびワーケーションは体力勝負です(笑)
こうして伊江島での滞在時間はあっという間に過ぎ去っていきました。
<4日目:2月21日火曜日>
最終日の朝、いつもの朝食がちょっとだけ寂しく感じました。民家のお父さんの背中も少し寂しそうでしたが、温かく「いつでも戻って来いよ」と声をかけてくれたので、玄関を出るときは「いってきます」といって民家を後にしました。
伊江港ターミナルでは民家さんたちも全員集合し、なんと玉城さんは最後のサプライズで参加者全員分にたくさんのお土産を用意してくれていました。受け取る皆さんの笑顔が今回のワーケーションを物語っていました。
フェリーをバックに民家さんと一緒に記念撮影をし、船に乗り込んで港を見ると、初日で見かけたお出迎えと同じお見送りの姿がそこにはありました。
みんなが別れを惜しみながら、港の端まで走っていき、見えなくなるまで手を振ってくれました。
本島からフェリーで30分、近くて便利な離島には沢山の産業があり、沢山の課題もあるけれど、本当に大切な、「人の温もり」も実は沢山、存在している。そんなことを実感できる3泊4日のワーケーションでした。
その温もりは、今回参加された皆さんの心にもしっかりと残ったことでしょう。また近いうちに戻っていきたくなるような、そんなふるさとのような場所として、伊江島があり続けるために必要なこと、そのヒントが今回のワーケーションプログラムには沢山詰まっていたのではないでしょうか。