
国頭村 実施レポート(2023年2月20日~22日)
沖縄本島最北端に位置する国頭(くにがみ)村。2021年に世界自然遺産に認定された「やんばるの森」が広がるこの豊かな土地で、2泊3日のしまむすびワーケーションが開催されました!
今回のワーケーションが他のしまむすびワーケーションと大きく異なるのは、「企業」が対象であること。企業の業務の一環として、社員がワーケーションに参加することになります。
様々な地域での体験を通じ、「人材育成」「異業種交流」「地域貢献」を目指す、まさに「参加すること自体がワーケーション」という挑戦的な試みに、賛同いただいたのは4社8名の皆さま。2泊3日という短期間ではありましたが、とても濃密な時間を過ごすことが出来ました。
■1日目:2月20日(月)
西海岸、村のほぼ南西の端に位置する「道の駅 ゆいゆい国頭」に、12:00に集合。1社から複数名ご参加いただいた企業の方もいらっしゃるものの、別会社の方とはほぼ初対面という状態でしたが皆さん既に「タビマエプログラム」でお会いしていることもあり、最初から和やかな雰囲気でプログラムはスタートしました。
1日目はeバイク(電動補助付き自転車)で最北部の奥集落を目指すAコースと、道中の様々な集落を巡りつつ宿泊施設にて国頭の家庭料理を体験するBコースに分かれてスタート。Aコースは1名が本格的なロードバイクで先導し、その後方を3名がeバイクで追いかける形でしたが、当日は海風が強く、電動補助があってもなかなか苦戦する方も。それでもやんばるの雄大な景色を見ながらのサイクリングはとても気持ちが良さそうでした。
Bコースは辺士名のスーパーマーケットや商店街を見学したのち、謝敷集落へ。ここでは、地元の観光/宿泊事業者であるEndemic Garden Hさんが運営されている、集落を活かした宿泊施設「南瞑森室」を見学しながら、集落を散策して昔ながらの国頭・沖縄の暮らしの知恵を学びました。
1日目の最終目的地であり、3日間の滞在地でもある、奥集落にある「奥やんばるの里」に先に到着したのはBコース。ここは村が設立し、Endemic Garden Hが運営する1棟貸しの宿泊施設で、川沿いに6棟のコテージ型宿泊施設と管理棟、そして集落の方も利用するグラウンドゴルフ場があります。6棟の中で最も広く、今回の滞在中の拠点として利用した「西銘」にて、Bコースの皆さんは地元のお母さん方と一緒に郷土料理作り体験をしました。
まずはお母さん方に連れられて、近くの畑へ。島らっきょう、ニンジン、インゲン豆などの野菜を収穫したら、今度は西銘に戻りそれらを使った料理作りのお手伝い。島らっきょうは薄切りにしてチャンプルーの材料に、ニンジンはシリシリに、インゲン豆は素揚げにと、新鮮な素材を活かした料理が次々と出来上がりました。
Aコースは辺戸岬のアップダウンを超えて奥やんばるの里に到着、自転車に慣れたメンバーでもへとへとになる行程でしたが、皆さん充実感も感じられていたようです。
皆で協働して作った夕食をいただいた後は、地元のネイチャーガイド上開地さんの案内の元、夜の海岸へ自然観察に出かけました。奥集落は他の集落からも離れており、人口も少ないために人工の光がほとんど無く、海岸でライトを消すと真の暗闇を体験することができます。本当は星空を観察するために、ワーケーション日程を新月に合わせていたのですが、生憎の曇り空で星空はほとんど見ることが出来ませんでした。それでも夜の海岸で漂着物を探したり、海に流れ込む川で汽水域に住む生物を観察したりと、自分で歩くだけでは気づかない自然の面白さを体験することが出来ました。また、海の向こうには与論島の光がうっすらと浮かんでおり、奄美地方と沖縄がどれだけ近接しているのかを肌で体感することも出来ました。
■2日目:2月21日(火)
この日の朝は、奥共同店特製のお弁当からスタート。奥共同店は沖縄県内でよくみられる「共同売店」という、地域の方々が出資して運営する商店の形の草分けであり、創業はなんと明治39年!コミュニティビジネスの走りともいえる、地域に無くてはならない存在です。
午前中は、やんばるの自然を守る上で避けては通れない「外来種防除」について学ぶプログラム。まずは昨晩もご案内いただいた上開地さんから、外来種とは何か、何故防がなければいけないのかなど、1時間しっかり講義をしていただきました。私たちが身近に感じるような動植物も実は外来種であることも多く、またそれらがやんばるの自然で、コントロール出来ない範囲で広がっているという事実に驚くとともに、知られていないということ自体の課題感や、広めていく必要性も強く感じる講義でした。
講義の後は実践!ということで、続いては参加者・事務局総出で奥やんばるの里に広がる芝生にて、外来種の植物駆除を実施しました。一見すると芝生と見間違えてしまいそうな植物たちですが、実はとても繁殖力が強く、根っこが少しでも残るとそこからまた生えてくることもあるとか…ということで、かなり深く、広く伸びている根を完璧に引き抜くため、皆で一心不乱に地面を掘り起こしていき、気づいたらあっという間に1時間半がたっていました。防除できたのはごく限られたエリアだけですが、何より参加した全員に強く意識が植え付けられたのが印象的でした。修学旅行の体験メニューにも取り入れられているということで、少しずつでも認識が広まっているようです。
午後はこのワーケーションプログラムにおける最大のポイントでもある、2日間で体験した国頭の自然や文化を元にしたアイデアソンを実施しました。
まずは参加者を3グループに分け、アイデアソンで最も大事な「他の人のアイデアを否定しない」練習として、ウォーミングアップ的なワークを実施。次に、尼崎市が開発した「amagasaki to the future 2」というカードゲームを使い、地域の困りごとを様々な地域内リソースを使いつつ、自由な発想で解決手段を考えてく練習を実施しました。
頭の体操が住んだところで、今度は国頭村について考える時間へ。まずは参加者が体験したことや、国頭をよく知る事務局が、「国頭にどんなリソースがあるだろうか?」を考えて1つずつカードに記載していきます。これを一旦グループごとに一つにまとめ、シャッフルしてそれぞれの手元に5枚ずつ配り、手札としました。次に事務局から配られた「国頭村民が抱える課題」に対し、配られた手札を使いながら、既存の思考の枠組みを超えた解決方法を考えます。これが非常に難しく、また面白いプロセスで、各チームがお題に対して様々なアイデアを出していました。さらに手札では足りないアイデアは、後からどんどんとカードに書き出して追加していくことで、解決方法がより立体になっていきます。
続いては、「企業向けワーケーション」ならではのポイント。一旦チームをシャッフルした後で、参加された皆様が、今度はご自身の会社を「資源」に見立てて、国頭の課題解決のために使えそうなことをカードに書き出していきます。書き切ったところで、先ほど書き出した地域課題解決アイデアに、企業の資源をどのように絡めたら解決に近づくのかを考えていきました。会社の社員規模を利用するアイデアもあれば、会社が持つネットワークやサービスを利用するアイデアもあり、企業参加者ならではのアイデアがどんどんと出てくるのがとても印象的でした。
最後は3チームごとの課題解決アイデアを発表し合って、アイデアソンは終了。5時間があっという間に過ぎる、とても白熱したプログラムでした。
頭をいっぱい使ったプログラムのあとは、BBQで栄養補給をしたのち、夜のやんばるの自然観察へ。前日が海だったのに対し、この日は森の中に入っていきます。「やんばる学びの森」にて自然ガイドの大城さんのご案内の元、ガイド無しでは立ち入れないトレッキングコースを1時間強見学していきました。やんばるにしか生息しないカエルや、大きなヒル、ヤンバルクイナが食べたと思われるカタツムリの殻などを見つけ、森の豊かさを実感するプログラムとなりました。
■3日目:2月22日(水)
あっという間に最終日、この日の朝は奥やんばる食堂でポーク卵の朝食からスタート。参加された方の多くが県外出身者だったこともあり、沖縄らしい朝食のスタイルに大満足されている様子でした。
この日は途中で帰られる方もいらっしゃり、eバイクの台数も足りていたため、当初の予定を変更しeバイクコースのみに。奥集落を出発して、最終目的地の「道の駅 やんばるパイナップルの丘 安波」へ向かいます。
1日目に走った西海岸と比べてアップダウンの激しい東海岸でしたが、風の影響をあまり受けなかったこともあり、序盤は順調に進みます。
途中、楚洲と伊部の共同売店に立ち寄った後、安田集落へ。ここの共同売店は移住されたご夫婦が営んでおり、ご自身で焙煎したコーヒーや採取した蜂蜜が売られている他、地域の子供たちが考えて作ったガチャガチャも置かれているなど、面白い試みがなされています。地域のコミュニティの中心となっている安田共同売店で最後の英気を養った後は、安波集落から「美ら作」地区へ。
この一帯はパイナップル畑が高台一面に広がり、とても景色が良いのですが、なんといっても上り坂がハード!最後の最後にとてつもない関門が待ち受けていましたが、参加者の皆さんは誰一人心折れることなく、無事こぎ続けて安波の道の駅までたどり着きました。
これで、2泊3日の企業向けワーケーションプログラムは終了。
企業向けという、少しハードルの高いプログラムでしたが、当初の目的であった「人材育成(=従業員の地域理解促進)」「異業種交流」「地域貢献=ワークショップでのアイデアソン」と、無事成果も残し終了することができました。
また、受け入れ側である国頭村の皆様にとっても、今回のプログラムがとても刺激になっていたようで、今後の企業との連携のヒントがいくつも見つかったようでした。
まさに「関係人口」を生み出し、地域と企業が「共創」する、きっかけを作ることのできたしまむすびワーケーション@国頭でした。
受入・運営をされたくんじゃん暮らしサポーターズネットワークの皆さま、そして参加された企業の皆さま、本当にお疲れ様でした!&ありがとうございました!!