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多良間村 第1回 実施レポート(2022年11月23日~26日)

沖縄県先島諸島の石垣島と宮古島の間に位置し、水納島と多良間島という2つの島から成り立つ楕円形の小さな離島、それが多良間村です。 
   
交通アクセス上、宮古島からフェリーまたは小型飛行機しか渡航手段がないため、宮古島の人でもなかなか行ったことがある人が少ない島ですが、沖縄が誇る農作物の代表格でもあり、黒糖の原料となるサトウキビの収穫量が県内の40%に上ることで有名な島です。
多良間島は約1000人と人口が少なく、またアクセスも限られるため、その分自然環境への負荷が少なく、手付かずの自然が残されて言います。また村ならではの伝統的な祭事や社寺が残り、緑と美しいコバルトブルーの海に囲まれた魅力的な島です。

そんな美しい海洋と独自の伝統という観光資源に恵まれながらも、
若年層の定着率が上がらず村の担い手が減少、過疎化が進み古くから継承されてきた多良間独自の文化・伝統は、衰退の危機にあります。また海流の通り道であるため漂着ゴミが多く、自然環境保護と伝統文化継承の側面からも課題を抱えていました。
今回は、そんな沖縄の離島・多良間島で、「アンビバレンス」をテーマにしたワーケーションを実施しました。「アンビバレンス」とは、ひとつのものごとに対して、相反する感情を同時に抱いたり、相反する態度を同時に取る、ということです。これを多良間島に置き換えて考えてみると、観光振興と自然環境保護、どちらも大事ですよね。
まさにこの「アンビバレンス」な状態を受入れ、「観光振興×自然環境保護」という一見相反する2つの取組みのバランスをどう取るべきか、このワーケーションでは全く異なる境遇の5名5組の方々に考えて頂きました。それだけではなく、多良間の「アンビバレンス」に触れることで、参加者にも自身の「アンビバレンス」と向きあっていただくことを伝え、多良間島でのワーケーションをスタートしていきました。

<11月11日:タビマエプログラムで事前の顔合わせ>

参加者5名全員が参加し、オンライン「タビマエプログラム」を実施しました。
目的は参加者同士の御顔合わせと行程、プログラム確認です。
まずローカルパートナーである波平さんから自己紹介と簡単な多良間島の紹介をした後に、参加者同士の自己紹介と他己紹介を行い、体験プログラムであるLNT(Leave no trace)の概念説明とアンビバレンスについて説明。
今回のワーケーションへの意気込みを参加者の皆さんに促したところ想像以上に、皆さんの主体性と多良間への熱いが交わされ、期待値の高いワーケーションになるだろうと想像できました!!

<11月23日:1日目>

ワーケーション当日、5組5名共に参加し、皆無事に上陸!!
事前にタビマエプログラムを実施しているおかげもあり、和気あいあいとした雰囲気でオリエンテーションが17時よりスタートし、波平さんの説明に皆さんワクワクした面持ちで傾聴していました。その後は、地元の居酒屋での交流会で皆さん、それぞれの想いをお酒と共に積極的に交流ができました。
この日は初日ということで移動の疲れも見受けられ、それぞれの期待と不安も考慮し、長居はせずに解散しました。

<11月24日:2日目>

ワーケーション2日目は雨の中でスタート。午前中は多良間村民族資料館の館長本村さんのお話を聞かせて頂きました。
本村さんご自身も多良間村出身で、多良間の歴史や伝統を身をもって体験しているためその説明にも一層の熱がはいり、ひとつひとつの展示物に対して真剣に、そして時にはユーモアも含めながら丁寧にお話してくれました。

多良間村の魅力を歴史の観点から短い期間で学ぶことができ、この後のプログラムである「集落散策」での謎解きを進めていくために活用できる知識もインプットできたため、とても貴重な時間でした。
また参加者の皆さんも元々旅、旅行好きな方が多く、異文化への関心、理解が高く、積極的に本村さんに質問して、想定していたより時間を超えるほど盛り上がり、本村さんはそのままランチにもご一緒してくれました。(笑)
こういった地元の方と身近に触れ合えるところも、離島の良さですね。

午後のプログラムは、今回のワーケーションの醍醐味の一つでもある「謎解き集落散策」です。
参加者の5名が2グループに別れ、多良間島内で様々な謎解きに挑戦しました。お題が20個近くあり、地元の人でも解読できないクイズや、午前の資料館で学んだことがヒントに繋がるものまで多岐にわたり、制限時間もあるのでみんな必死な顔でクイズに取り組みました。

歴史の授業もこのようなクイズ形式や間違い探しであれば子供たちも興味をそそられ、楽しく郷土史を学べるのではないでしょうか?参加された皆さんも、多良間の歴史や建造物を自然に回ることができ、非常によくできたプログラムだと驚いていました!

午後プログラムの謎解き散策で、周囲20キロある島の半分は巡回修了!多良間島のコンパクトさを実感できますね。
夜は天川公民館にて区長さんや地元の方々との交流会に参加し、コロナ禍で中止になっていたお祭りを今年は復活させる!という意気込みを聴かせて頂き、多良間島の熱気を感じました。

<11月25日:3日目>

ワーケーション3日目は天候にも恵まれたので、急遽行程プログラムを変更し、朝から追い込み漁を体験しました。このプログラムには女性陣3名が参加し、地元ベテラン漁師さんの手ほどきを受けながら、シュノーケルをつけて等間隔に広がり、11月のやや冷える海の中でバシャバシャと水しぶきを立てながら魚を追い込んでいたところ、なんとウミガメが網にひっかかってしまい、漁師さんが助けてくれました。皆さんもドキドキハラハラしていましたが、こんなハプニングも離島ならではかもしれませんね。

追い込み漁で収穫した魚を、今度は陸に上がった後に自分たちで捌きます。慣れない包丁さばきで刺身をこしらえ、新鮮な魚を堪能していたら、突然別の漁師さんがイラブ―(ウミヘビ)を持ってきたので、皆さん驚愕!いい機会なのでイラブ―に触って、首にも巻いて、記念撮影をしました。
まさに沖縄ならではの体験ですね。(笑)

少し休憩したのち、午後からは「アンビバレンス」を体現する「自然保護×観光」、その取組であるLNT(Leave no trace=ゴミを残さない観光)の実践として、「マナティ&アウェアネスワークショップ」を体験してもらいました。まずは参加者全員がビーチに移動し、沖縄県内で広く実施されているのビーチクリーンアップ活動「マナティ」を実施。主体的に沖縄の漂流ゴミ問題について考えました。そして「アウェアネスワークショップ」として、そのゴミたちが実際はどこからきてどれぐらいの量があり、沖縄の生態系や自然に影響を及ぼしているのか、ローカルパートナーの方の説明を受けながら、多良間島に潜む自然環境問題に触れていきました。
この体験が、多良間島での「観光×自然」をどのように共存させていくのか、きっと参加者ひとりひとりが考えるキッカケになったことでしょう。

この日の夜は参加者5名全員で、ジャンキムヌの準備に取り掛かりました。ジャンキムヌとは元々多良間島で棟上げ式の際などによく食べられる、串焼きのようなもので、沖縄のお祝いごとに目にする、テンプラ、かまぼこ、揚げ豆腐、三枚肉、昆布を串にさしたものです。
このワーケーションだからこそ出会えた方々と、多良間島だからこそできた体験を振り返る時間ととなり、とても素敵な時間でした。

<11月26日:4日目最終日>

ワーケーション最終日となった4日目。この日も天気は晴れ!まずは皆で分担して、昨日盛り上がったBBQの片付けを実施し、最後はコーヒータイムで一息。コーヒーに多良間島の黒糖シロップを入れて飲んだところ、これがコーヒーとの相性抜群!!
多良間島観光協会で販売しているのですが、ワーケーション中に何度も通う方がいらっしゃった理由がよくわかりました。

午後は自由時間でしたが、丁度この日は年に一度の「コミュティまつり」が開催されていたので、参加者の皆さんも参加!!地域の出し物や演奏を楽しみながらすっかり多良間島に溶け込んでしまいました。
その後は各自お仕事時間。そして夜は最終日ということもあり、波平さんが貸し切りで用意してくれたカラオケ店で山羊汁を振舞っていただきました。島の人は実は山羊を食べるのも見るのも大好き。シーズンでないので、『ピンダアース大会』という闘山羊大会は見られなかったのですが、島内散策中に何度も目にした山羊も多良間島にとっては大切な構成要素なのだと、山羊汁を食べながら実感した夜でした。

そして最後の交流会はスペシャルゲストとして、追い込み漁をプロデュースいただいた漁師さんも合流しての大カラオケ大会になりました。三線演奏に、もはや多良間島に哀愁を感じてきそうなくらいでした。
「またいつでもかえっておいで」
そんな言葉がとても暖かく聞こえた最後の夜は、日をまたぐ直前まで参加者全員で楽しみながら過ごしました。

プログラムを通じて島の「アンビバレンス」を考え、感じ、自らのことを考え、多良間と繋がる。そんな長いようで短かった4日間が終了しました。

今回、参加者の中に多良間島の黒糖を利用した食品を取り扱う方がいたのですが、プログラムを通じて、是非多良間島の子供たちに自社の食品を食べてもらい、地元でとれるサトウキビからできる黒糖に愛着と誇りを感じて欲しいと考えていたそうです。

参加者一人一人が自分事で島との未来を考える。そんな関係が築ける余白が、このワーケーションにはありました。島の課題は山盛り、それでもこのプログラムを通じて新しい島の一歩が踏み出されていく。そんな感覚を、参加者も関係者も持つことができたプログラムでした。